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スープ 

mikumari 242
料理を始めて間もない頃、海のすぐ近くのレストランで働いていて、そこで経験したことが、今のお店のスタイルの元になっていると思う。

その当時、本当に何もできなくて、やることなすこと全てが新鮮で、勉強だった。

ある晩、レストランの営業後、お店のスタッフが帰った後、料理のこと、これからのことなど考えながら、1人残って包丁を研いでいると、「仕込み忘れ」とシェフが1人、厨房へ入ってきた。
お互い、しばらく無言で作業していたと思う。
包丁も研ぎ終わり、「お先失礼します」と帰ろうとした時、シェフが『まかない』と、スープとメインの乗ったプレートを目の前の作業台に運んでくれた。
本当にお腹がペコペコで、スープから口に運んだ。
やさしい味のスープが、胃の中に染み渡っていくのがわかった。
それからは夢中で食べた。
もう、美味しくて、美味しくて。

シェフにとっては、ただの『まかない』だったのかもしれない。
でも私にとって、それは自分1人の為に作ってくれた、まぎれもない、『シェフズ・テーブル』そのものだった。
いまでも、はっきりと覚えている。


mikumariの料理の最初が、前菜でもサラダでもなく、『スープ』なのは、その時のオモイが忘れられないからであり、次のプレートへの、チューニング的な役割としても、出しているのです。
そして今も、1人で営業しているのは、きっと、その時のシェフの姿とか、気持ちとかを、追い求めているからかも知れません。

『シェフズ・テーブル』

もし、いつかそう呼ばれる料理をつくれるようになったら、
コースの最初の料理は『スープ』から始めたい。


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